「短頭種は暑さに弱いので気をつけて」「短頭種は麻酔のリスクが高い」。フレンチブルドッグを迎えると、この言葉をあちこちで見かけるようになります。でも、そもそも短頭種とは何を指す言葉なのか。うちの子は当てはまるのか。この記事では、言葉の意味と、どの犬種が当てはまるのか、そして知っておくと役に立つ場面を整理します。
短頭種とは、マズルが短い犬種のこと
短頭種(たんとうしゅ)は、頭蓋骨の長さに対してマズル(鼻先から口にかけての部分)が極端に短い犬種をまとめた呼び方です。英語ではブラキセファリック(brachycephalic)といいます。
犬の頭の形は、大きく3つに分けられます。
| 分類 | 特徴 | 代表的な犬種 |
|---|---|---|
| 長頭種 | マズルが長く、細長い頭の形 | ボルゾイ、ダックスフンド、コリー |
| 中頭種 | 標準的なバランス。犬種の多くがここに入る | 柴犬、ラブラドール、ビーグル |
| 短頭種 | マズルが短く、顔が平らに近い | フレンチブルドッグ、パグ、ブルドッグ |
フレンチブルドッグは、短頭種のなかでも代表格として名前が挙がる犬種です。あの平らな顔立ちは、犬種の特徴であると同時に、体のつくりの話でもあります。
短頭種に当てはまる犬種
一般に短頭種とされるのは、次のような犬種です。
| 犬種 | ひとこと |
|---|---|
| フレンチブルドッグ | 短頭種の代表格。マズルが短く、体もがっしりしている |
| パグ | フレンチブルドッグと並んで名前が挙がることが多い |
| ブルドッグ(イングリッシュ) | フレンチブルドッグより大型。マズルはさらに短い |
| ボストンテリア | フレンチブルドッグと見た目が似ていて、混同されやすい |
| ペキニーズ | 顔が平らで、被毛が長い |
| シーズー | 小型で、短頭種のなかでは症状が出にくいとされることもある |
| ボクサー | 中型犬。運動量が多いぶん、暑さには注意が必要 |
| ブリュッセルグリフォン | 小型。マズルが非常に短い |
| チン、キャバリア、キングチャールズスパニエル | 短頭種に含めて扱われることが多い |
この一覧は、どこかの機関が公式に定めたものではありません。犬種ごとに程度の差があり、同じ犬種のなかでも個体差があります。「短頭種かどうか」は白か黒かで割り切れるものではなく、程度の問題だと考えるほうが実態に近いです。
紛らわしいのがブルテリア
名前に「ブル」がつくため短頭種だと思われがちですが、ブルテリアは解剖学的にはマズルがしっかりある犬種で、短頭種に含めないのが一般的です。あの独特な卵型の頭部は、マズルが短いからではなく、額から鼻先までがなだらかにつながった形をしているためです。
「ブル」は闘牛(bull baiting)に使われていた系統に由来する言葉で、頭の形の分類ではありません。アメリカン・ピット・ブル・テリアやスタッフォードシャー・ブル・テリアも同じで、名前に「ブル」が入っていても短頭種ではありません。
ただし、航空会社のリストには入っています
ここが少しややこしいところです。ANAが夏季にお預かりを中止している「短頭犬種」のリストには、ブルドッグやフレンチブルドッグと並んで、ブル・テリアとチャウチャウが入っています。
チャウチャウも短頭種には分類されない犬種です。それでもリストに入っているのは、航空会社が犬の頭骨を分類しているのではなく、輸送中に体調を崩すリスクが高い犬種をまとめているからです。暑さに弱い、気道が狭い、被毛が厚い。理由はさまざまですが、実務としては同じ扱いになります。
つまり、こういうことです。
- 解剖学的な分類としては、ブルテリアは短頭種ではない
- 航空会社の運用上は、短頭犬種として扱われる
- 「分類上は違うから大丈夫」とは考えないほうがいい
なぜ、この区別を知っておく必要があるのか
言葉の定義そのものより、実際に困る場面のほうが大事です。短頭種であることが関わってくるのは、主に次の4つです。
1. 飛行機に乗せられないことがある
日本の航空会社では、犬を客室に連れて入ることができません。乗せる場合は貨物室でのお預かりになりますが、短頭種はここでさらに制限を受けます。ANAは毎年5月1日から10月31日まで短頭犬種のお預かりを中止しており、JALの国内線ではブルドッグとフレンチブルドッグを通年で預かっていません。
時期のほかに、月齢や健康状態などの条件もあります。飛行機での移動を考えている場合は、早い段階で各社の公式ページを確認してください。ここに書いたのは2026年9月時点の内容です。
飛行機を使わない前提で考えると、遠方への移動は車か、ペット輸送業者に頼むことになります。里帰りや引っ越しの計画は、その前提で組んでおくと慌てずに済みます。
2. 麻酔のリスクが高い
気道が狭いため、麻酔から覚めるときに呼吸のトラブルが起きやすいとされています。避妊去勢手術、歯石除去、皮膚のできものの切除。どれも珍しい処置ではありませんが、短頭種では他の犬種より慎重な管理が必要になります。
かかりつけの動物病院を選ぶとき、短頭種の扱いに慣れているかどうかを見ておくと安心です。麻酔をかける処置の前には、その病院での短頭種の実績や、術後どう管理するのかを聞いておくといいと思います。
3. 暑さに弱い
犬は汗をかいて体温を下げることができないため、ハアハアと速く呼吸して(パンティング)、口の中の水分を蒸発させることで熱を逃がします。マズルが短いと、この仕組みがうまく働きません。空気の通り道が短く狭いぶん、冷やす効率が落ちるからです。
夏の散歩は早朝か日没後に。アスファルトは日が落ちてもしばらく熱を持っています。手の甲を5秒あてて熱いと感じるなら、まだ歩かせる時間ではありません。室内でもエアコンは切らない。これは贅沢ではなく、必要な設備だと考えたほうがいいです。
4. 短頭種気道症候群という言葉を知っておく
短頭種気道症候群(BOAS)は、マズルが短い体のつくりが原因で呼吸がしづらくなる状態をまとめた呼び方です。鼻の穴が狭い、のどの奥の軟口蓋が長い、気管が細いといった要素が重なって起こります。
いびきをかく、少し歩いただけでゼーゼーする、寝ているときに息が止まるように見える、興奮すると呼吸が荒くなってなかなか戻らない。こうしたサインが続くようなら、動物病院で相談してみてください。程度によっては手術で改善できる場合があります。
「フレブルはいびきをかくもの」と言われますし、実際そういう面はあります。ただ、どこまでが個性でどこからが治療対象なのかは、自己判断ではなく獣医師の目で見てもらうのがいちばん確実です。
迎える前に、見ておきたいこと
短頭種であることは変えられませんが、程度には個体差があります。見学のときに見ておけることがいくつかあります。
- 鼻の穴の形。極端に細く、切れ込みのように見える場合は、呼吸がしづらいことがあります
- 安静にしているときの呼吸音。寝ているときにゼーゼーと音がしていないか
- 少し動いたあとの戻り方。遊んだあと、呼吸が落ち着くまでにどのくらいかかるか
- 親犬の様子。母犬や父犬に会えるなら、その子たちの呼吸も見ておく
4つめは特に見ておく価値があります。呼吸のしやすさは体のつくりの話なので、親犬の状態はある程度の目安になります。ブリーダーさんが親犬の健康面をどう考えて交配しているか、聞いてみるのもいいと思います。
BUHI MEDIAが「短頭種」という言葉を使っている理由
当サイトの掲載基準では、フレンチブルドッグ、または短頭種を専門に手がけている犬舎を掲載の条件にしています。フレンチブルドッグだけに限定していないのは、パグやボストンテリアなど近い犬種を一緒に手がけている犬舎があるためです。
短頭種を専門にしている犬舎であれば、暑さの管理、出産のときの注意点、呼吸の状態の見方といったことに日常的に向き合っています。この記事に書いたようなことを、質問すれば具体的に答えてもらえる。そこを条件にしたかった、というのが理由です。
実際にどんな犬舎を掲載しているかは掲載についてのページに条件を公開しています。見学に行くときの考え方は、次の記事にまとめました。