「遠方の方もオンライン見学でお迎えいただけます」。ブリーダーのサイトでこう書かれているのを見て、これで本当に子犬を迎えられるのだろうかと思ったことはありませんか。結論から書くと、オンライン見学そのものは違法ではありません。ただし、一度も犬舎へ行かないまま子犬を迎えることは、法律上できません。オンライン見学をどう位置づけるか、順番の問題です。
先に結論
- オンライン見学は、事前の下見として使うぶんには問題ない
- お迎えの前に、迎える人が犬舎へ出向いて、子犬を直接見て、対面で説明を受ける必要がある
- ブリーダーが空港や自宅まで子犬を連れてきて引き渡す形は、法律が求めているやり方ではない
- 一度も会わないまま空輸や配送で完結させる形も、同じく要件を満たさない
つまり「オンラインか、来舎か」ではなく、「オンラインで下見をしたうえで、最後に必ず来舎する」という順番になります。
根拠になる法律
動物愛護管理法(正式には「動物の愛護及び管理に関する法律」)の第21条の4です。ブリーダーもペットショップも第一種動物取扱業者にあたり、犬を販売するときには次のことが義務づけられています。
| 条文のことば | 意味していること |
|---|---|
| あらかじめ | 引き渡しより前に済ませること。お迎えが終わってから説明を受けるのでは順番が逆になる |
| その事業所において | 登録された犬舎で行うこと。自宅で営んでいる場合は、その自宅が事業所にあたる。迎える人がそこまで出向く必要があり、ブリーダーが子犬を連れてくる形では要件を満たさない |
| 現在の状態を直接見せる (現物確認) | 迎えるその子犬を、実際に目の前で見せること。写真や動画、画面越しでは代わりにならない |
| 対面により情報を提供する (対面説明) | 飼い方や保管の方法、生年月日、繁殖を行った人の氏名など、省令で定められた項目を、書面などを使って説明すること |
犬舎の中をすべて見せる義務はありません
「その事業所において」という言葉から、飼育スペースの奥まで見せてもらえるはずだ、と受け取ってしまいそうになります。ですが、法律が求めているのはそこではありません。事業所の中で、迎えるその子犬に実際に会えること。それが条件です。
一般のご家庭で犬舎を営んでいる場合、事業所として登録されているのは自宅そのものです。生活している空間をそのまま見せることは、防犯の面からも、休ませている犬を落ち着かせる意味でも、現実的ではありません。玄関先や、見学のために用意された部屋で子犬に会う形になることがあります。これは法律の要件を満たしています。
見せてもらえる範囲が限られていても、それだけで「何か隠している」と考える必要はない、ということです。
「事業所において」が加わったのは2019年の改正から
対面で説明する義務は以前からありましたが、場所の指定はありませんでした。そのため、空港や購入者の自宅まで子犬を運び、その場で説明して引き渡すというやり方が行われていました。
この方法だと、実際に子犬が育ってきた場所を見ないまま話が進みます。目の前に子犬がいる状態でその場の契約を求められやすい、という指摘もありました。迎える人が現物を確認し、契約の前に落ち着いて説明を受けたうえで、飼えるかどうかを判断できるようにする。そのために、2019年の改正で説明を行う場所が事業所に限定されました。
「オンラインでもよい例外」があるという話について
条文には、対面によることが困難な場合には省令で定める別の方法でもよい、という括弧書きがあります。これを根拠に「オンラインでも大丈夫」と説明されることがありますが、正確ではありません。
この括弧書きがかかっているのは対面説明の部分だけです。事業所で子犬を直接見せる(現物確認)ほうには例外が書かれていません。説明の方法に幅があるかどうかという話であって、犬舎へ行かなくてよいという意味ではない、ということです。
なお、この義務はブリーダーだけのものではありません。ペットショップにも同じようにかかります。迎える先による違いは、法律の義務ではなく、見せてもらえる情報の量のほうにあります。
ケース別に見るとこうなります
| お迎えのしかた | 法律上 | 読者にとっての意味 |
|---|---|---|
| オンラインで見せてもらい、そのまま契約。空輸や配送で子犬が届く | 満たさない | 現物確認も対面説明も行われていない。この形をすすめてくる犬舎とは、進める前に立ち止まったほうがよい |
| オンラインで見せてもらい、ブリーダーが空港や自宅まで連れてきて、その場で説明を受けて引き渡し | 満たさない | 対面ではあるが、場所が事業所ではない。2019年の改正で明確に対象外になった形 |
| オンラインで下見をして、お迎え当日に犬舎へ行き、子犬を見て説明を受けてから引き渡し | 満たす | 法律上は問題ない。ただし当日だけだと、その場で「やめます」と言いにくい |
| 先に犬舎へ見学に行き、後日あらためてお迎えに行く | 満たす | いちばん余裕のある形。考える時間を持てる |
| 犬舎の中には入れず、玄関先や見学スペースで子犬に会う | 満たす | 事業所の中で子犬に会えていれば要件は満たす。ただし育っている環境そのものは見えない |
見学スペースだけ、という場合について
前の章に書いたとおり、この形は法律の要件を満たしています。感染症の持ち込みを防ぐため、産後の母犬を休ませるため、他の子犬を騒がせないためなど、そうしている理由もさまざまです。
ただ、迎える側から見ると、判断の材料がひとつ減るのは事実です。どんな広さで、どのくらいの数の犬がいて、どんな清潔さで保たれているのか。そこは見えないままになります。気になるようであれば、見学の範囲について問い合わせの段階で聞いておくと、当日「思っていたのと違った」とならずに済みます。
オンライン見学が悪いわけではありません
ここまで法律の話を書いてきましたが、オンライン見学そのものを否定したいわけではありません。むしろ、使い方によってはとても役に立ちます。
- 遠方の犬舎で、何度も足を運べないとき、最初の一回をオンラインにすれば移動の負担が減る
- 産後まもない母犬を休ませたい時期に、子犬の様子だけ先に見せてもらえる
- 問い合わせのやりとりだけでは分からない、ブリーダーさんの人柄や話し方が分かる
- 迎えるかどうか迷っている段階で、気軽に相談しやすい
問題になるのは、オンライン見学が来舎の代わりとして使われるときだけです。下見として使い、最後に会いに行く。この順番であれば、むしろ丁寧なお迎えの形だと思います。
会うのはいつがいいか
法律の要件だけを見れば、お迎え当日に初めて犬舎へ行き、そこで子犬を見て説明を受けて連れて帰る形でも足ります。実際、遠方の方に対してこの形をとっている犬舎はあります。
それでも、可能であればお迎えの日とは別に一度行くことをおすすめします。理由は法律ではなく、気持ちの問題です。
お迎え当日は、迎える準備をすべて整えて、その子を連れて帰るつもりで向かうことになります。その状態で「やっぱり今回は見送ります」と言うのは、現実にはとても難しい。相手にも時間を使わせています。判断の余地を残しておきたいなら、荷物のない日に一度会っておくほうがいいと思います。
日程が合わない場合でも、当日にどのくらい時間をとってもらえるかは事前に聞けます。連れて帰るまでに、子犬の様子を見て、質問して、書面を読む時間があるかどうか。そこが確保されていれば、当日だけでも慌てずに済みます。
問い合わせのときに聞いておきたいこと
- お迎えまでに犬舎へお伺いする形になりますか
- 見学はどの範囲まで見せていただけますか(飼育スペースに入れるか、見学スペースのみか)
- 見学とお迎えは別の日にできますか。難しい場合、当日はどのくらいお時間をいただけますか
- 母犬に会うことはできますか(時期によって難しい場合はその理由も)
- 説明のときにいただける書面には、どんなことが書かれていますか
どれも、答えづらい質問ではありません。むしろ普段から見学を受け入れている犬舎であれば、すぐに具体的な答えが返ってきます。返答の速さや具体性そのものが、判断の材料になります。
4つめの母犬について、なぜ会えないことがあるのか、会えたときに何を見ればいいのかは、別の記事にまとめています。
守られていない場合、どうなるのか
第21条の4に違反したからといって、すぐに罰金というわけではありません。都道府県知事などが改善を勧告し、それでも従わない場合に命令、さらに従わなければ登録の取消しや業務の停止という流れになります。
迎える側が知っておきたいのは、罰則の重さよりも次のことです。この義務は、売る側を取り締まるためというより、迎える人がその子を見て、話を聞いて、飼えるかどうかを落ち着いて判断できるようにするために置かれています。会いに行くのは義務を果たすためではなく、権利を使うことでもあります。
BUHI MEDIAが掲載している犬舎について
当サイトでは、犬舎へお越しいただいての見学を受け入れている犬舎のみを掲載しています。オンライン見学を併用している犬舎は掲載します。オンラインだけで完結する形をとっている犬舎は掲載しません。
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