お迎えのときに受け取る「血統書」。正式には血統証明書といいますが、正直なところ、最初に見たときは何が書いてあるのかさっぱり分かりませんでした。英字と数字がびっしり並んでいて、家系図のような枠があって……という印象だけ。
ブリーダーのサイトを見ていると「チャンピオン直子」という言葉もよく出てきます。なんとなくすごそうですが、それが何を意味するのかも、当時はよく分かっていませんでした。
今回は、血統書の見方とチャンピオン称号について整理してみます。調べてみると、「思っていたのと違う」ポイントがいくつかありました。
そもそも血統書とは何か
血統証明書は、その犬が純血種であることを証明する公式な書類です。人間でいえば戸籍や家系図にあたるもの、とよく説明されます。
日本では複数の団体が血統書を発行していますが、90%以上がJKC(一般社団法人ジャパンケネルクラブ)によるものです。他にPD(日本警察犬協会)やKCジャパン(日本社会福祉愛犬協会)などがあります。この記事では、最も発行数の多いJKCの血統書をもとに解説します。
ここで最初に押さえておきたいのが、この一点です。
血統書は「純血種であること」の証明であって、「健康であること」の保証書ではありません。
血統書があるから安心、という話ではないんですね。ここを取り違えると、あとで書くチャンピオンの話も誤解しやすくなります。
血統書の見方:番号の配置を覚えると読める
血統書の真ん中を占めているのが、祖先を記した家系図の部分です。番号が振られていますが、この配置には決まりがあります。
| 番号 | 続柄 |
|---|---|
| 1 | 父犬 |
| 3・4 | 父方の祖父・祖母 |
| 7〜10 | 父方の曽祖父母 |
| 2 | 母犬 |
| 5・6 | 母方の祖父・祖母 |
| 11〜14 | 母方の曽祖父母 |
つまり、上半分が父方、下半分が母方という構成です。これさえ分かれば、家系図部分は一気に読めるようになります。
JKCでは通常、3代前の祖先まで記載した「3代祖血統証明書」を発行していますが、より詳細な血統管理のために4代祖血統証明書を発行することもできます。申し込みはJKC本部ではなく、所属の愛犬クラブへ提出する形です。
家系図以外の記載項目
犬名は「名前+犬舎名」でできている
血統書に記載されるのは、繁殖者がつけた正式な犬名です。これは名前と犬舎名の組み合わせでできています。
たとえば「○○○ of △△△ JP」という記載であれば、○○○が犬の名前、△△△がブリーダーの犬舎名です。家族が呼んでいる名前とは別物なので、最初は戸惑うかもしれません。
なお、飼い主がつけた名前を血統証明書に印字してもらうことも可能です。
登録日・一胎子数
本犬がJKCに登録された日と、一緒に生まれた兄弟(一胎子)の数がオス・メス別に記載されます(死亡した犬は除く)。一胎子登録番号欄には、同時に生まれた兄弟姉妹犬の番号が記載されます。
「うちの子は何頭兄弟だったんだろう」と気になったら、ここを見れば分かります。
股関節評価・肘関節評価
あまり注目されませんが、血統書には股関節評価や肘関節評価といった、交配に関する評価が記載されることがあります。
後述しますが、個人的にはチャンピオン称号よりこちらの方が実質的な情報かもしれないと思っています。
チャンピオン賞歴
取得したチャンピオンの種別と、登録日が記載される欄です。ここからが本題ですね。
チャンピオン犬とは何か
チャンピオンとは、JKCが公認するドッグショー(展覧会)や競技会において、所定の条件を満たすことで得られる資格のことです。登録手続きを済ませると、血統証明書に取得称号が記載され、登録証明書が発行されます。
取得条件は、意外と厳しい
最も一般的な「ドッグショーチャンピオン(JKCチャンピオン)」の場合、必要な条件は次の通りです。
- CACカード・M.CACカードを合計4枚取得すること
- そのうち、2名以上の異なる審査員から交付されていること
- 4枚のうち、1枚以上がM.CACカードであること
- 訓練試験(CDⅠ、OBⅠ、GDⅠ、IGPⅠ、BHのいずれか)の登録
- DNA登録
ここで意外だったのが、訓練試験の登録が必要という点です。見た目だけを競っているわけではなく、基本的な訓練の裏付けも求められるんですね。
チャンピオンには種類がある
「チャンピオン」とひと口に言っても、実は種類が多岐にわたります。
- ドッグショーチャンピオン(外貌の評価)
- FCIインターナショナルチャンピオン(国際的な資格)
- トレーニングチャンピオン(訓練競技会)
- オビディエンスチャンピオン(服従訓練)
- アジリティーチャンピオン(障害物競技)
「チャンピオン直子」と書かれていても、どの種類のチャンピオンなのかで意味合いが変わってきます。気になる場合は、ブリーダーさんに確認してみるといいと思います。
「チャンピオン直子」をどう受け止めるか
さて、ここが今回一番考えさせられた部分です。
ドッグショーで評価されているのは、基本的に「その犬種の理想像(犬種標準)にどれだけ近いか」です。体型、骨格、被毛、歩様、気質などが審査されます。
言い換えると——ドッグショーは健康診断ではありません。
チャンピオン犬の子だから健康、とは限らないということです。これは血統書そのものと同じで、「純血種としての質の証明」であって「健康の保証」ではないんですね。
とはいえ、無意味ではない
公平のために書いておくと、チャンピオン称号にはこんな側面もあります。
- 犬種標準に近い体型であることの、第三者による評価
- ドッグショーに出すには、人前で落ち着いていられる気質が必要
- 会場への移動や出陳の手間をかけている=犬に手をかけている証でもある
- 訓練試験・DNA登録という条件をクリアしている
つまり、「健康の証明」ではないけれど、「その犬に手をかけてきた証」ではある——そんな受け止め方が現実的かなと思います。
価格が高くなる理由としては納得できますが、「チャンピオン直子だから安心」と考えるのは少し違うということですね。
血統書で、本当に見ておきたいところ
では、血統書のどこを見ればいいのか。私が調べていて「ここか」と思ったのは2箇所でした。
1. 同じ犬名が何度も出ていないか
家系図の部分を眺めて、同じ犬の名前が複数箇所に登場していないかを確認してみてください。
近い世代で同じ名前が繰り返し出てくる場合、それは近親交配が行われている可能性を示します。近親交配が進むと、そのラインが持っていた遺伝性疾患が発現しやすくなることがあります。
4代祖血統証明書を発行してもらえば、より広い範囲で確認できます。
2. 股関節評価などの記載があるか
前述した股関節評価・肘関節評価です。こうした評価を取得して記載しているということは、ブリーダーが健康面のチェックに取り組んでいるということでもあります。
チャンピオン称号の華やかさに比べると地味な項目ですが、これから一緒に暮らす犬を選ぶという意味では、こちらの方が実質的な情報かもしれません。
ペットショップでは、購入前に見られない
最後に、私自身の経験を書いておきます。
以前の記事にも書きましたが、私がペットショップで両親犬の毛色を尋ねたとき、返ってきたのは「購入が成立してから血統書を取り寄せるため、事前にはお伝えできない」という答えでした。
つまり、ここまで書いてきた「同じ犬名が繰り返されていないか」「股関節評価はあるか」といった確認は、ペットショップでは購入を決めたあとにしかできないということです。
ブリーダーからお迎えする場合、事前に血統書を見せてもらえることが多いようです。この違いは、けっこう大きいのではないかと思っています。
まとめ
- 血統書は「純血種であること」の証明で、健康の保証書ではない
- 家系図は「上半分が父方、下半分が母方」で読める
- 犬名は「名前+犬舎名」でできている
- チャンピオンはドッグショーや競技会で得られる資格で、種類がいくつもある
- チャンピオン=健康ではないが、手をかけてきた証ではある
- 実質的に見たいのは、近親交配の有無と股関節などの評価
血統書は、読み方さえ分かれば「その子がどこから来たのか」を教えてくれる書類です。せっかく手元にあるものなので、一度じっくり眺めてみると、新しい発見があるかもしれません。
参考にした情報
- 一般社団法人ジャパンケネルクラブ「チャンピオンについて(ドッグショー・競技会)」
- 一般社団法人ジャパンケネルクラブ「ドッグショーのチャンピオンについて」
- PetHouse ten・ten「JKC血統証明書の見かた」
- 子犬のへや「犬の血統書の見方」
- みんなのブリーダー「犬の血統書とは?見方と犬種記号一覧」