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実家で飼っていたフレンチブルドッグ2頭は、どちらも最期の時期に介護が必要になりました。母犬は8か月、娘犬は約2か月。どちらも24時間体制の生活でした。
この記事を書こうと思ったのは、家族がこう言っていたからです。
もっと知識があれば、もっと楽に過ごさせてあげられたかもしれない。
当時は今ほど情報がなく、私たちも調べる余裕がありませんでした。目の前の犬の介護に必死だったんです。
だから、当時の記録と、今なら使える選択肢を並べて書き残しておきます。これから同じ時期を迎える方の役に立てば嬉しいです。
この記事の出来事は15年から20年ほど前のことです。当時の記録は残っておらず、家族の記憶をもとに書いています。また、運営者は獣医師ではありません。介護の方針は必ずかかりつけの獣医師とご相談ください。
登場する2頭について
- 母犬(パイド/メス)……15歳3か月で旅立ちました。老衰による食事困難から胃ろうへ
- 娘犬(ブリンドル/メス)……12歳9か月で旅立ちました。四肢麻痺とてんかん発作
母犬の場合:ある日突然、食べなくなった
14歳半のときでした。急に水を飲まなくなり、ごはんも食べなくなりました。
病院で検査を受けても、特に病気は見つかりません。診断は老衰でした。
「歳を取って食べ物や水を摂らなくなり、自然に弱っていくのが本来の流れです」——そう説明を受けました。
頭では分かっても、心が追いつきませんでした。数日前まで、普通に水を飲んでごはんを食べていたんです。あまりに急でした。
胃ろうという選択肢
そこで提示されたのが、胃ろう手術でした。お腹に穴を開けてチューブを通し、そこから直接胃に栄養や水分を入れる方法です。
「受けるかどうか、ご家族で考えてください」と言われました。
迷いました。シニア犬、特にフレンチブルドッグは全身麻酔のリスクが高いとされているからです。短頭種は呼吸器の構造上、麻酔の管理に注意が必要になります。
ただ、たまたまその病院の先生が胃ろう手術を得意にされていて、「数時間の全身麻酔で、リスクを極力抑えて行えます」と説明を受けました。
家族みんなで悩んだ末、受けてもらうことにしました。日帰り手術で、無事に成功。
ただ、体からチューブが出ている状態は、見ていてつらいものがありました。
1時間おきの、8か月
そこから、24時間体制の介護生活が始まりました。
水分は1時間ごと
胃ろうのチューブから、1時間ごとに水分を入れます。注射器のような器具を使うのですが、ゆっくり入れないといけません。器具も固くて、押すのに力がいります。
地味に、でも確実に大変な作業でした。
ごはんはミキサーで
食事は、それまで食べていたものをミキサーでドロドロにして、同じ器具で胃に入れます。1回につき5〜6本分。
人間の手が痛くなるほどの作業量でした。
歩きながらの食事介助
この頃には認知症のような症状も出ていて、ぐるぐると歩き回るようになっていました。
ごはんの時間に歩き回っていると、止めるわけにもいきません。その子のペースに合わせて、一緒に歩きながら食事を入れる——これが一番大変でした。
家族で情報を共有する
うんちがゆるくなっていたので、その状態を家族で共有して、ごはんの固さや量を調整していました。
今思えば、これは自然にやっていた良い工夫だったと思います。介護は一人で抱えると必ず限界が来るので、状態を共有する仕組みがあるだけで違います。
深夜も1時間おき
当時、私と姉は実家を出ていたので、週末だけ帰って手伝っていました。
平日は両親2人で、仕事をしながら24時間の介護です。深夜も1時間おきにアラームを鳴らして水分を入れていたので、1時間以上続けて眠れることはありませんでした。
それを、8か月。
最期は、ぐっすり眠りながら母の隣で息を引き取りました。
娘犬の場合:四肢麻痺と、てんかん発作
娘犬は、もともとケガや病気の多い子でした。鼠径部の腫瘍摘出、片目の手術、肉球の炎症、てんかん発作に関連した脊髄の検査——いろいろありました。
最終的に四肢麻痺となり、約2か月の介護生活に入りました。
這おうとして、手から血が出る
動けないのに、床をずりずりと這って進もうとするんです。その結果、手が擦れて出血してしまう。
だから包帯をぐるぐる巻きにしていました。
体がずっと熱かった
この時期、常に体がとても熱い状態でした。
1日に何度も発作が
てんかん発作が1日に数回起こり、手足をバタバタさせます。見ているのが本当につらい時間でした。
最期まで、ごはんが好きな子でした
母に抱かれて、ごはんを食べさせてもらっているときでした。心臓の鼓動が弱くなって、そのまま旅立ちました。
母犬のごはんまで奪おうとするくらい、食べることが大好きな子でした。
「最期までごはん食べてて、この子らしいね」——今でも家族でそう話しています。
今なら、こういう選択肢があります
ここからは、家族が「知っていれば」と言っていた部分です。
私自身が使ったわけではありません。当時なかった、あるいは知らなかったものを調べて書いています。実際に選ぶときは、その子の状態に合うか獣医師に相談してください。
ぐるぐる歩き回るとき
当時は、テーブルやイスにぶつからないよう見守り、体を少し支えていました。つきっきりです。
今は、円形に近い形のペットサークルが販売されています。行き止まりがないので歩き続けられ、側面がメッシュのものは通気性も保てます。ぶつかったときの衝撃をやわらげるクッションと組み合わせる方法もあるようです。
さらに面白いのが、専用品ではない工夫です。
SNSを見ていると、子ども用のビニールプールを活用して、限られたスペースの中で安全にぐるぐるできるようにしている方がいます。回転する椅子のパーツを応用して、同じ場所で回れるようにしている方も。
「老犬 徘徊 対策」「老犬 旋回 サークル」などで検索すると、実際に介護をしている方の投稿がたくさん出てきます。写真つきで工夫を紹介されている方も多いので、その子の体格や部屋の広さに合う方法が見つかるかもしれません。
ちなみに、その発想を製品化したような円形のサークルも売られています。こういうものです。
サイズは体格に合わせて選んでください。旋回できる広さがあるか、越えられない高さかを確認するとよさそうです。
当時の私たちには、こうした発想がまったくありませんでした。「専用品を買う」以外にも道はある——それを知っているだけで、選択肢はずいぶん広がると思います。
寝たきりになったとき
娘犬のときに知りたかったのが、この分野です。
床ずれ防止マットは、体圧を分散させるタイプのものです。洗えるものを選ぶと、介護中の負担が減ります。
もうひとつが介護用クッション。体を支えて姿勢を安定させるもので、そらまめ型など形もいろいろあります。
調べていて気づいたのですが、「中大型短足犬用」といったサイズ展開があるものもあります。フレンチブルドッグのような体型は、一般的な小型犬用だと合わないことがあるので、ここは確認したいところです。
ほかに、体を持ち上げて移動させるときに使う運搬補助マットもあります。人間側の腰の負担を減らせるものです。
当時は介護用クッションという存在自体を知りませんでした。あれば、あの2か月はもう少し違ったかもしれません。
ここで紹介したものは、私が使ったわけではありません。「こういうものがある」という情報としてお読みください。実際に選ぶときは、その子の体格・症状に合うかを獣医師に相談してから決めることをおすすめします。
そのほかにあるもの
| 場面 | 使えるもの |
|---|---|
| 足腰のサポート | スロープ、ステップ |
| 歩行のサポート | 歩行補助ハーネス、車椅子 |
| 食事のサポート | 介護食器、シリンジ、ミキサー |
| 投薬のサポート | ピルクラッシャー、投薬補助のおやつ |
| 排泄のサポート | おむつ、洗えるトイレマット |
| ぶつかり防止 | コーナーガード、フェイスガード |
| お散歩 | ペットカート、バギー |
これだけ選択肢があることを、当時の私たちは知りませんでした。
介護を経験して思うこと
調べる余裕がないのが、介護です
「調べればよかった」と書きましたが、実際には調べる余裕がありません。目の前の子の世話で手一杯だからです。
だからこそ、必要になる前に知っておくことに意味があると思います。この記事を、まだ元気な子と暮らしている今のうちに読んでもらえたら嬉しいです。
飼い主が倒れたら、介護は続きません
1時間以上続けて眠れない生活が8か月。今振り返っても、両親はよく続けられたと思います。
介護グッズは「犬のため」に見えますが、飼い主の負担を減らすための道具でもあります。人間が休めることは、結果的にその子のためになります。
選択に、正解はありません
胃ろう手術を受けるかどうかは、本当に悩みました。全身麻酔のリスクを取って延命するのか、自然に任せるのか。
結果として8か月一緒にいられましたが、これが正解だったと言い切るつもりはありません。受けない選択も、同じくらい愛情のある判断だと思います。
大事なのは、家族で話し合って決めることではないでしょうか。
そのあとのこと
2頭とも、同じところで簡易的なお葬式をして火葬してもらいました。費用は1頭あたり3万円ほどだったと記憶しています。
お墓は作っていません。今も実家に骨壺を置いています。
「お墓を作った方がいい」という考え方もあると思いますが、我が家は今後も作らず、家に置いておく予定です。
ここも、正解はひとつではないのだと思います。